目次
ヘム鉄と非ヘム鉄、吸収率はどれくらい違う?
キレート鉄(ビスグリシン酸鉄)は何が違う?
製品ラベルで鉄の種類を見分けるには?
鉄サプリで胃腸症状が出やすいのはどのタイプ?
SuppNestでできること
よくある質問
ヘム鉄と非ヘム鉄、吸収率はどれくらい違う?
ヘム鉄は摂取量の約25%が吸収されるのに対し、非ヘム鉄は17%以下にとどまるとされています(米国立衛生研究所ODSおよびNCBI StatPearlsの資料による)。ヘム鉄は食事内容の影響を受けにくく、非ヘム鉄は組み合わせる食品によって吸収率が変わりやすい違いがあります。
非ヘム鉄の吸収率が変動しやすいのは、一緒に摂る食品の影響を受けやすいためです。ビタミンCは非ヘム鉄の吸収を助ける方向に働く一方、緑茶・コーヒーのタンニンやカルシウムは吸収を下げる方向に働くことが知られています。組み合わせ方の詳細はサプリの飲み合わせ やビタミンCの記事 でも扱っています。ヘム鉄は動物性食品(食肉・魚など)由来のポルフィリン錯体で、こうした食品因子の影響を受けにくい点が非ヘム鉄との大きな違いです。
種類 主な原材料表示例 吸収率の目安(食事由来)
ヘム鉄 ヘム鉄 約25%
非ヘム鉄(鉄塩) クエン酸第一鉄ナトリウム/ピロリン酸第二鉄/フマル酸第一鉄 17%以下
キレート鉄 ビスグリシン酸鉄(国内未承認・海外製品に多い) 次章の試験では鉄塩より高い値が報告
出典:NIH Office of Dietary Supplements, "Iron — Health Professional Fact Sheet";NCBI StatPearls, "Dietary Iron"(食事由来の鉄・成人の目安)。原材料表示例はSuppNest調べ。
ヘム鉄と非ヘム鉄の吸収率(食事由来)
出典:NIH Office of Dietary Supplements, Iron — Health Professional Fact Sheet;NCBI StatPearls, Dietary Iron。数値は成人の食事由来の鉄の目安で、個人差があります。
キレート鉄(ビスグリシン酸鉄)は何が違う?
キレート鉄はアミノ酸と鉄を結合させた形の鉄です。生後6〜36か月の乳幼児40人を対象にした二重盲検試験では、見かけの鉄吸収率が硫酸鉄26.7%に対しビスグリシン酸鉄90.9%と報告されました(Pineda・Ashmead、2001年)。対象は乳幼児で、成人への当てはめには注意が必要です。
この試験は、鉄欠乏性貧血のある生後6〜36か月の乳幼児40人を、硫酸鉄群とビスグリシン酸鉄群に無作為に分け、体重1kgあたり鉄5mgを28日間投与して比較したものです。両群でヘモグロビン値は改善しましたが、血中フェリチン値が有意に増えたのはビスグリシン酸鉄群だけでした。人数の少ない試験で、対象も成人ではなく乳幼児という限界があります。同じ結果が健康な成人にも当てはまるとは限りません。
硫酸鉄とビスグリシン酸鉄の見かけの吸収率(乳幼児対象の二重盲検試験)
出典:Pineda O, Ashmead HD. "Effectiveness of treatment of iron-deficiency anemia in infants and young children with ferrous bis-glycinate chelate." Nutrition. 2001;17(5). 鉄欠乏性貧血のある乳幼児40人(硫酸鉄群・ビスグリシン酸鉄群)の二重盲検試験。対象は乳幼児に限られ、成人への一般化には限界があります。
鉄1日摂取量の推奨量・上限の考え方は鉄分サプリの飲みすぎについての記事 で扱っています。キレート鉄でも合計量の考え方は変わりません。
製品ラベルで鉄の種類を見分けるには?
原材料表示に「ヘム鉄」「クエン酸第一鉄ナトリウム」「ピロリン酸第二鉄」「フマル酸第一鉄」とあれば、それぞれヘム鉄・非ヘム鉄(鉄塩)です。「ビスグリシン酸鉄」はキレート鉄で、日本では食品原料として未承認のため海外製サプリの表示に多く見られます。
ヘム鉄 豚肝臓抽出物などを原料とする有機鉄。原材料表示に「ヘム鉄」とそのまま書かれることが多い。
クエン酸第一鉄ナトリウム 水溶性の非ヘム鉄(鉄塩)。国内の鉄強化食品・サプリでよく使われる。
ピロリン酸第二鉄 難溶性の非ヘム鉄(鉄塩)。中性域で溶けにくく、風味に影響しにくい。
フマル酸第一鉄 非ヘム鉄(鉄塩)の一種。
ビスグリシン酸鉄 アミノ酸キレート鉄。日本では食品原料として未承認のため、主に海外(米国など)製のサプリの表示で見られる。
出典:原材料の分類・呼称はSuppNest調べ。ビスグリシン酸鉄の国内未承認の扱いは各サプリの原材料表示から確認できます。
鉄サプリで胃腸症状が出やすいのはどのタイプ?
硫酸鉄などの鉄塩は胃腸症状が出やすく、43件・6,831人を対象にした2015年のメタ分析では便秘12%・吐き気11%・下痢8%の頻度で報告されています(Tolkien ら)。米国立衛生研究所は、鉄アミノ酸キレートなど一部の形態は鉄塩より胃腸症状が少ない可能性があるとしています。
このメタ分析は、成人を対象にした43件のランダム化比較試験(合計6,831人)を統合したもので、プラセボと比較した硫酸鉄のオッズ比は2.32でした。用量と副作用の強さには明確な関連が見られなかったとも報告されています。一方、NIHのファクトシートは「ヘム鉄ポリペプチド、カルボニル鉄、アミノ酸キレート鉄、多糖鉄複合体などは、硫酸鉄・塩化第二鉄などの鉄塩より胃腸症状が少ない可能性がある」と述べています。ただし個人差があり、すべての人に当てはまるわけではありません。
出典:Tolkien Z, Stecher L, Mander AP, Pereira DIA, Powell JJ. "Ferrous Sulfate Supplementation Causes Significant Gastrointestinal Side-Effects in Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis." PLoS ONE. 2015;NIH Office of Dietary Supplements, "Iron — Health Professional Fact Sheet"。
選ぶときのポイント: ①吸収率を優先するならヘム鉄、②鉄塩で胃腸症状が出た経験があるならキレート鉄も選択肢、③どのタイプでも合計量が推奨量から大きく離れていないかを確認する、の3点。
SuppNestでできること
成分ごとに全製品を横断で合計し、目安の範囲内かを表示する画面
鉄の種類(ヘム鉄・非ヘム鉄・キレート鉄)が違っても、体内に入る鉄の量を合計で考える必要があるのは同じです。SuppNest は、飲んでいる製品を登録するだけで鉄の合計量をまとめ、推奨量との距離を確認できます。複数の鉄サプリ・鉄入りマルチビタミンを併用している場合は、成分の重複を確認する方法 もあわせてご覧ください。数字は偽らず、確認できないものは「データ不足」と正直に表示します。
本アプリ・本記事は情報提供であり、診断・治療・予防を目的とするものではありません。持病のある方・服薬中の方は医師または薬剤師にご相談ください。
よくある質問
ヘム鉄と非ヘム鉄、どちらが吸収されやすいですか?
一般に、ヘム鉄のほうが非ヘム鉄より吸収されやすいとされています。米国立衛生研究所(NIH)やNCBI StatPearlsの資料によると、食事由来のヘム鉄は約25%が吸収されるのに対し、非ヘム鉄は17%以下にとどまります。
キレート鉄とはどんな鉄ですか?
鉄をアミノ酸(グリシンなど)と結合させた形の鉄で、代表的なものにビスグリシン酸鉄があります。生後6〜36か月の乳幼児40人を対象にした二重盲検試験では、硫酸鉄より高い吸収率が報告されています。ただし対象は乳幼児で、成人にそのまま当てはまるとは限りません。
ビスグリシン酸鉄は日本の鉄サプリでも使われていますか?
国内では食品原料として未承認のため、国産のサプリの表示にはあまり見られません。海外(主に米国)製のサプリの原材料表示で見かけることが多い成分です。
鉄サプリで胃が痛くなったり便秘になったりするのはなぜですか?
硫酸鉄などの鉄塩は胃腸を刺激しやすく、43件・6,831人を対象にした2015年のメタ分析では、便秘12%・吐き気11%・下痢8%の頻度で症状が報告されています。米国立衛生研究所は、一部の鉄の形態は鉄塩より胃腸症状が少ない可能性があるとしています。
鉄分の1日の摂取量の目安はどこで確認できますか?
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に推奨量が定められています。具体的な数値と飲みすぎた場合の症状は、鉄分サプリの飲みすぎについて解説した記事でまとめています。
出典
NIH Office of Dietary Supplements, "Iron — Health Professional Fact Sheet"(ヘム鉄・非ヘム鉄の吸収率、鉄剤形態と胃腸症状)。原文 。
NCBI StatPearls, "Dietary Iron"(食事由来の鉄の吸収率)。
Tolkien Z, Stecher L, Mander AP, Pereira DIA, Powell JJ. "Ferrous Sulfate Supplementation Causes Significant Gastrointestinal Side-Effects in Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis." PLoS ONE. 2015;10(2)(43件のRCT・6,831人のメタ分析)。
Pineda O, Ashmead HD. "Effectiveness of treatment of iron-deficiency anemia in infants and young children with ferrous bis-glycinate chelate." Nutrition. 2001;17(5)(乳幼児40人の二重盲検試験)。
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