どんな誤りを公開したのですか?
3本の記事で、3種類の誤りを公開しました。製品の配合を確認せずに断定したもの、機能性表示食品の届出件数が古い値のままだったもの、そして食事摂取基準の旧版を引いていたものです。いずれも訂正文を記事の中に残したまま直しています。
| 日付 | 記事 | 何が誤っていたか |
| 7月31日 | プロテインと併用して重複しやすい成分 | 「6製品を確認したところ、配合されているのはタンパク質のみ」と書いていました。ザバス「ホエイプロテイン100」はビタミンD・C・B群を配合しています。 |
| 8月2日 | GABAサプリの選び方 | 届出件数を6成分ぶん書いていましたが、すべて誤りでした。GABAは1,295件と書いて実際は1,409件でした。 |
| 8月2日 | ルテインサプリの選び方 | ルテインの届出件数を390件と書いていました。数え直すと521件(撤回を除く現行は337件)で、390件はどの数え方でも再現できませんでした。 |
訂正は記事から消さずに残しています。あとから読む人が「何が変わったか」を確認できないと、訂正した意味がないためです。
いちばん害が大きかったのはどれですか?
プロテインの記事です。数字を作ったわけではなく、手元のデータをそのまま信じて「確認した」と書きました。捏造していないぶん読者には裏取り済みに見え、しかも「プロテインからは重複しない」という事実と逆の理解を与えるものでした。
この記事は「プロテインと他のサプリで成分が重複しないか」を扱っていました。手元の製品データにはタンパク質しか登録されていなかったので、それを見て「配合されているのはタンパク質のみ」と書きました。実際にはザバス「ホエイプロテイン100」は1食28gあたりビタミンD 12.1µgを含み、これは成人の目安量9.0µgを1食で超えます。重複を避けるために読む記事が、重複しない根拠を与えていたことになります。
「確認した」という言葉は、確認の実体なしに使ってはいけません。捏造は疑われれば見つかりますが、確認したふりは疑われません。いまは「確認」「調べた」「実測」と書くなら、その根拠のURLか一次資料の頁を必ず併記する規則にしています。
なぜ人が読んでも止まらなかったのですか?
読み直しは「書いてあることが正しく見えるか」しか確かめられないためです。届出件数も基準値も、数え直さなければ正しさが分かりません。実際、食事摂取基準の旧版を引いていた記事は、公開済み16本のうち11本にのぼっていました。
食事摂取基準は5年ごとに改定されます。2025年版では6つの値が変わり、とくに鉄は耐容上限量そのものが廃止されました。「鉄の上限は男性50mg・女性40mg」は旧版の値です。11本すべてが、読んだ限りではもっともらしく見えました。それでも古かったのです。
もう一つ、読み直しでは見えない場所がありました。記事の meta 要素の中です。本文からタグを剥がして検査する仕組みだと属性値が消えるため、そこに残っていた旧い数値は2件とも素通りしていました。
いま何を確かめていますか?
公開前に5つの検査を通します。1つでも引っかかれば、その日は公開しません。共通しているのは「数えれば答えが決まるもの」を対象にしていることで、文章の良し悪しは判定していません。
- 栄養素の基準値。
旧版(2020年版)の数値が残っていないか。meta の属性値も別に取り出して見ます。
- 届出件数。
記事に書いた件数が、手元の11,207件を数えた値と合うか。
- 届出統計。
配合量の分布・販売状況・撤回件数が、集計した台帳と合うか。
- 記事の形。
問いと答えが噛み合っているか、出典のない図表がないか、結論が長すぎないか。
- 公開ファイル。
記事以外の作業用ファイルが混ざっていないか。
基準値と届出件数については、先に台帳を作りました。一次資料から値を書き出したファイルを1つ用意し、記事はそこからしか引かない。検査はその台帳と記事を突き合わせるだけです。記憶や検索結果から書かない、という規則を機械で守らせる形にしています。
検査が誤ることはありませんか?
あります。8月4日には、マグネシウムの上限「350mg」に含まれる「50mg」を、鉄の旧上限として誤検出していたことが分かりました。数字の境界を指定していなかったためです。検査を直したあと、本当の誤りは今も捕まえられることを確かめました。
逆方向の失敗もありました。「よくある質問」という語でFAQの折りたたみを判定したところ、目次の中にある「よくある質問」へのリンクに当たって24本すべてが公開停止になりました。判定の材料を語ではなく要素の class に変えて直しています。
いちばん間の抜けていた例は、この編集方針のページ自身です。数字の出どころを説明するページが「食事摂取基準(2020年版)」のままでした。検査が記事とガイドしか見ていなかったので、誰も気づいていませんでした。対象を広げた瞬間に検出されました。
検査は万能ではありません。止められるのは「数えれば答えが決まるもの」だけです。問いに答えているか、読んで分かるか、その判断は人が読むしかありません。だから検査の結果を「正確さの保証」とは書かないことにしています。
同じことをする人へ
記事を機械で作るなら、検査も機械で作る必要があります。人の読み直しは、書いてあることが正しく見えるかしか確かめられないためです。とくに件数・基準値・配合量のように、数え直せば答えが決まるものは、先に台帳を作ってから書き始めるのが確実です。
- 数えれば答えが決まるものを見分ける。
件数・公的な基準値・製品の配合。これらは意見ではないので、機械で照合できます。
- 先に台帳を作る。
一次資料から値を書き出したファイルを1つ用意し、記事はそこからしか引かない。
- 「確認した」と書ける条件を決める。
根拠のURLか一次資料の頁を併記できないなら、その語は使わない。
- 検査の対象から漏れている場所を探す。
meta の属性値、編集方針のページ、トップページ。本文だけ見ていると素通りします。
- 検査自身の誤りも記録する。
万能だと書けば、それ自体が確かめられない主張になります。
本記事は情報提供であり、診断・治療・予防を目的とするものではありません。持病のある方・服薬中の方は医師または薬剤師にご相談ください。