編集の記録 北林 歩 ・ 2026.08.04 ・ 約7分で読めます

自分の記事の誤りを
3回公開しました

結論

公開後に誤りが見つかった記事は3本です。いずれも人が読んで確かめたつもりで公開したものでした。読み直しでは同じ誤りが止まらなかったため、公開前に5つの機械の検査を通す形に変えました。

この記事の数字はすべて、実際に公開されている記事と訂正文から確認できます。

要点
  • 誤りは3件。届出件数、製品の配合、旧版の基準値の3種類だった。
  • いちばん害が大きかったのは、捏造ではなく「確認せずに断定した」記述。
  • 旧版の基準値は、公開済み16本のうち11本に入っていた。
  • 数えれば答えが決まるものは、人でなく機械に確かめさせることにした。
  • 検査自体も誤る。その例もこの記事に書いてある。

どんな誤りを公開したのですか?

3本の記事で、3種類の誤りを公開しました。製品の配合を確認せずに断定したもの、機能性表示食品の届出件数が古い値のままだったもの、そして食事摂取基準の旧版を引いていたものです。いずれも訂正文を記事の中に残したまま直しています。

日付記事何が誤っていたか
7月31日プロテインと併用して重複しやすい成分「6製品を確認したところ、配合されているのはタンパク質のみ」と書いていました。ザバス「ホエイプロテイン100」はビタミンD・C・B群を配合しています。
8月2日GABAサプリの選び方届出件数を6成分ぶん書いていましたが、すべて誤りでした。GABAは1,295件と書いて実際は1,409件でした。
8月2日ルテインサプリの選び方ルテインの届出件数を390件と書いていました。数え直すと521件(撤回を除く現行は337件)で、390件はどの数え方でも再現できませんでした。

訂正は記事から消さずに残しています。あとから読む人が「何が変わったか」を確認できないと、訂正した意味がないためです。

いちばん害が大きかったのはどれですか?

プロテインの記事です。数字を作ったわけではなく、手元のデータをそのまま信じて「確認した」と書きました。捏造していないぶん読者には裏取り済みに見え、しかも「プロテインからは重複しない」という事実と逆の理解を与えるものでした。

この記事は「プロテインと他のサプリで成分が重複しないか」を扱っていました。手元の製品データにはタンパク質しか登録されていなかったので、それを見て「配合されているのはタンパク質のみ」と書きました。実際にはザバス「ホエイプロテイン100」は1食28gあたりビタミンD 12.1µgを含み、これは成人の目安量9.0µgを1食で超えます。重複を避けるために読む記事が、重複しない根拠を与えていたことになります。

「確認した」という言葉は、確認の実体なしに使ってはいけません。捏造は疑われれば見つかりますが、確認したふりは疑われません。いまは「確認」「調べた」「実測」と書くなら、その根拠のURLか一次資料の頁を必ず併記する規則にしています。

なぜ人が読んでも止まらなかったのですか?

読み直しは「書いてあることが正しく見えるか」しか確かめられないためです。届出件数も基準値も、数え直さなければ正しさが分かりません。実際、食事摂取基準の旧版を引いていた記事は、公開済み16本のうち11本にのぼっていました。

食事摂取基準は5年ごとに改定されます。2025年版では6つの値が変わり、とくに鉄は耐容上限量そのものが廃止されました。「鉄の上限は男性50mg・女性40mg」は旧版の値です。11本すべてが、読んだ限りではもっともらしく見えました。それでも古かったのです。

もう一つ、読み直しでは見えない場所がありました。記事の meta 要素の中です。本文からタグを剥がして検査する仕組みだと属性値が消えるため、そこに残っていた旧い数値は2件とも素通りしていました。

いま何を確かめていますか?

公開前に5つの検査を通します。1つでも引っかかれば、その日は公開しません。共通しているのは「数えれば答えが決まるもの」を対象にしていることで、文章の良し悪しは判定していません。

  1. 栄養素の基準値。

    旧版(2020年版)の数値が残っていないか。meta の属性値も別に取り出して見ます。

  2. 届出件数。

    記事に書いた件数が、手元の11,207件を数えた値と合うか。

  3. 届出統計。

    配合量の分布・販売状況・撤回件数が、集計した台帳と合うか。

  4. 記事の形。

    問いと答えが噛み合っているか、出典のない図表がないか、結論が長すぎないか。

  5. 公開ファイル。

    記事以外の作業用ファイルが混ざっていないか。

基準値と届出件数については、先に台帳を作りました。一次資料から値を書き出したファイルを1つ用意し、記事はそこからしか引かない。検査はその台帳と記事を突き合わせるだけです。記憶や検索結果から書かない、という規則を機械で守らせる形にしています。

検査が誤ることはありませんか?

あります。8月4日には、マグネシウムの上限「350mg」に含まれる「50mg」を、鉄の旧上限として誤検出していたことが分かりました。数字の境界を指定していなかったためです。検査を直したあと、本当の誤りは今も捕まえられることを確かめました。

逆方向の失敗もありました。「よくある質問」という語でFAQの折りたたみを判定したところ、目次の中にある「よくある質問」へのリンクに当たって24本すべてが公開停止になりました。判定の材料を語ではなく要素の class に変えて直しています。

いちばん間の抜けていた例は、この編集方針のページ自身です。数字の出どころを説明するページが「食事摂取基準(2020年版)」のままでした。検査が記事とガイドしか見ていなかったので、誰も気づいていませんでした。対象を広げた瞬間に検出されました。

検査は万能ではありません。止められるのは「数えれば答えが決まるもの」だけです。問いに答えているか、読んで分かるか、その判断は人が読むしかありません。だから検査の結果を「正確さの保証」とは書かないことにしています。

同じことをする人へ

記事を機械で作るなら、検査も機械で作る必要があります。人の読み直しは、書いてあることが正しく見えるかしか確かめられないためです。とくに件数・基準値・配合量のように、数え直せば答えが決まるものは、先に台帳を作ってから書き始めるのが確実です。

  1. 数えれば答えが決まるものを見分ける。

    件数・公的な基準値・製品の配合。これらは意見ではないので、機械で照合できます。

  2. 先に台帳を作る。

    一次資料から値を書き出したファイルを1つ用意し、記事はそこからしか引かない。

  3. 「確認した」と書ける条件を決める。

    根拠のURLか一次資料の頁を併記できないなら、その語は使わない。

  4. 検査の対象から漏れている場所を探す。

    meta の属性値、編集方針のページ、トップページ。本文だけ見ていると素通りします。

  5. 検査自身の誤りも記録する。

    万能だと書けば、それ自体が確かめられない主張になります。

本記事は情報提供であり、診断・治療・予防を目的とするものではありません。持病のある方・服薬中の方は医師または薬剤師にご相談ください。